アトピー性皮膚炎〜アレルギーうそ、ほんとう?〜


「アトピー性皮膚炎」という病名は誰でも耳にした事のある病名でしょう。
でも、アトピー性皮膚炎は原因、治療、診断など不確かな点もあり
多くの患者さんが混乱している病気です。
そこで今回は、日頃の診療で尋ねられる
アトピー性皮膚炎に対する疑問のいくつかにお答えします。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピーとは簡単に言えばアレルギー体質のことです。
そしてアトピー性皮膚炎とは皮膚が乾燥していることに加えて、
アレルギー反応などの多彩な刺激をうけ、かゆみを伴う湿疹ができ、
よくなったり、悪くなったりを繰り返す慢性の病気です。
最近では小児だけでなく、成人になって発症するアトピー性皮膚炎も増えています。

アトピー性皮膚炎の原因は?

乳幼児では食物アレルギー、年長児はチリ、ダニアレルギー、
思春期ではストレスが発症に関与していると言われていますが、
実際は環境、発汗、細菌・真菌、心理面など種々な因子が発症に関与しています。
原因・悪化因子は多岐にわたるため、患者さんごとにそれらを把握して、
除去など環境整備を含めた対策が必要になります。

アトピー性皮膚炎の治療は?

環境整備、スキンケア、外用剤、内服薬、かきむしり防止が治療の中心です。
そして治療目標はかゆみを抑え、皮膚のよい状態を続けることです。
そのためにこれらの治療を総合的に行っていく必要があります。


食事制限は必要?

食事制限に関しては賛否両論ありますが、
食事制限の根拠をアレルギー検査のみで行うのは正しくありません。
アレルゲンと症状との関係を明確にすることが大切です。
特に乳幼児では、食物とアトピー性皮膚炎の関係が重要視されています。
その場合では、検査のみでなく充分に観察することで、アレルゲンを明らかにします。
また乳幼児は大切な脳が形成される時期でもあります。
食事制限を素人判断で行うことも禁物です。
やむなく食事制限を行う場合も、代替え食品を考えるなどの栄養面に注意を払い
食事制限を行う必要があります。

生まれた時の湿疹はアトピー性皮膚炎?

乳児早期のアトピーは顔に出やすい特徴はあります。
しかしこの時期乳児湿疹も顔に多く見られるので、
一時期だけでは完全に区別はできません。
診断確定には経過を追うことが大切で、
診断までに
3ヶ月以上かかることも稀ではありません。
乳児早期の湿疹を安易にアトピー性皮膚炎と
決めつけることは、ある意味危険なことです。

アトピー性皮膚炎の注意点は?

アトピー性皮膚炎のお子さんは皮膚が弱いので、汗や汚れをきっかけに悪化します。
ですから皮膚の清潔を心がけましょう。
また軟膏は決められたとおりに使い、薬もきちんと飲むようにしましょう。
アトピー性皮膚炎は残念ながら短期間ですっかり治ることはありません。
アトピー性皮膚炎の治療に「あせり」は禁物です。
途中、自己判断で治療を中止することなく、
少し長くかかるものと考えて、賢くつきあっていって下さい。
お母さんやお子さんの「ストレス」がアトピーを悪化させることがある、
ということは広く知られている事実です。
そのために主治医にわからないこと、不満なことなどを伝え、
意思疎通を欠かさないようにすることが、
アトピー性皮膚炎の治療で何よりも大切なことだと思います。